東川アウトドアフェスティバル

2015年10月30日金曜日

写真家・山田雅幸

■山田雅幸
1971年生まれ、札幌市在住。日本自然科学写真協会(SSP)会員
15年程前から北海道の自然の姿に魅せられ、自然写真の撮影を始める。平成18年に17年間勤務していた情報処理系の企業を離れ、フリーの写真家となる。以後、一部国立公園でヒグマ管理の仕事に関わりながら、年間100日以上を山や森などのフィールドで過ごし作品の創造に打ち込む。

自然写真家 山田雅幸 [DEER'S EYE]

http://www.masayuki-yamada.com

<旅の概要>
2015年5月、2度目のアラスカの地を踏むこととなりました。今回は南東アラスカを船で周る旅。宿泊の可能な大型船で町や村を巡り、寄港地では船を離れて自然を楽しむ。そうして夜にはまた船に戻り、眠っている間に次の地へと移動します。
さまざまな自然や人の暮らしを海から眺める旅は約2週間。その間、日常の中にいくつもの心に響くシーンがありました。今回はほんの一部ではありますが、南東アラスカの自然や動物、人々の写真を展示させていただきます。



グレイシャーベイの氷河

グレイシャー・ベイ。大きな入り江をずっと奥まで入っていくと、こんな風景があちこちに広がります。その名の通り、ここは氷河が崩れ落ちてくる湾です。上陸ができるような場所ではありませんから、この風景は海から眺めるしかありません。氷河は氷が河のように移動するものだとは知っていましたが、見ている間にもあちこちで氷の崩落が起こっています。それほどのスピードで、氷全体が海にせり出しては崩れていく。その圧倒的な力量感に胸が躍りました。

沿岸を泳ぐザトウクジラ

ジュノーでは10人乗りの小さなボートでホエールウォッチングに行きました。ここで見られるのはザトウクジラです。まだ南の海から戻ってきている個体も少なく、よく言われる集団での菜食活動はしていませんでした。それでもあちこちで潮を吹いているのが見えるんです。すごく大きくて、優雅に泳ぐ姿は堂々としていて素晴らしい。ゆっくりと浮上してきて、ボートのすぐ近くを泳ぐ鯨もいて、潮を吹くシューッという音がハッキリと聞こえてきます。グレイシャー・ベイのように典型的な南東アラスカの風景をバックに鯨が泳ぐ。その情景は感動的でした。

海を渡るクリンギット族

ホエールウォッチングの途中で出会ったカヌーなんですが、すれ違うときにこうしてパドルを上げているんです。よく見たらパドルに先住民の模様が入っていて、どうやら挨拶をしてくれていたようなんです。模様を見せることで、自分たちはどこの村から来たのかを知らせ、怪しいものではないと伝える。それを未だに続けているんですね。ホエールウォッチングのガイドも、なかなか見られない風景だ、ラッキーでしたねって言ってました。

レインフォレストの森

サックスマントーテム公園っていう場所です。南東アラスカってすごく雨の多い地域なんですね。アラスカというと荒涼とした大地のイメージですが、ここでは苔むした森があちこちに広がってるんです。この大きな木も決して特別なものではなく、森の散策路のすぐ脇。寒い地域のレインフォレストというのが、とても不思議で神秘的に感じられました。

森から海を見つめるトーテムポール

シトカ国立歴史公園という、アラスカの中でも一番小さい国立公園です。ここの森の中にはトレイルがあって、トーテムポールがあちこちに立っているんです。このときは白頭鷲の甲高い鳴き声とワタリガラスのしゃがれた声が森中に響いていました。トーテムのモチーフになっている動物の声が、うっそうとした森の中に響いている。その演出にすっかりまいってしまって、幻想的な森の景色がいっそう意味深いものに思えました。

クリンギット族の女性

南東アラスカの先住民「クリンギット」の女性です。フナーという小さい港町では漁村の風景を昔のままに残しています。歴史をきちんと継承しようとしているんです。ここではクリンギットのダンスも披露されていますが、撮影することはできません。ダンス自体が神聖なものだからです。そこで、踊り終わった女性が立ち話をしているところを撮らせてもらいました。
こういった先住民の歴史を紹介する場所は、アラスカのどこの町に行ってもあります。それでいて先住民も後から来た人も自然に生活している。分け隔てが全くない。誰もが同じように、お互いを受け入れているんだなって思いました。